リヤドのアートウィークに集結する新興コレクターたちの熱気

プリンス・ファイサル・ビン・ファハド・アート・ホール。リヤドの夜、この会場にはウードの音色が響きます。2024年12月、第8回ミスク・アート・ウィークの会期中、新しい展覧会やアートフェア、マーケットを求める来場者が隣接する会場まで押し寄せました。その数か月後、リヤド全域を舞台にした別のイベントが産声を上げます。アートウィーク・リヤドです。初開催にもかかわらず13の会場に17,000人以上が足を運び、サウジアラビアの美術品市場に集まる人の量を可視化しました。なぜこれほどの人が動くのか。答えは会場の外、サザビーズのオークションやビジョン2030が掲げる数字の中にも転がっています。

AI Generated Image of a steep aerial view of Riyadh's skyline at dawn, dense sandstone rooftops giving way to modern towers against the open desert horizon

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アートウィーク・リヤド、初回開催という賭け

アートウィーク・リヤドは2025年4月6日から13日まで、テーマ「At The Edge」を掲げて開かれました。主催はビジュアル・アーツ委員会です。会場はJAX地区とアル・ムサ・センター、リヤドの文化施設が集まるエリアが選ばれました。フラッグシップの展示会には45以上のギャラリーが作品を出し、サウジアラビアと中東、そして世界の現代アート界をつなぐ場になっています。

展示は「日常生活」「風景」「モチーフ」という3つのテーマでキュレーションされました。サウジアラビアの視覚文化にある伝統と革新の交わりを見せる構成です。すでに芸術の拠点として定着しつつあるアル・ムサ・センターでは、15以上とされる特別企画展が組まれました。JAX地区では、主要な文化機関と個人コレクターが共同で手がけた「コレクション・イン・ダイアローグ」という3つとされる展覧会も開かれています。展示のほかに、視覚芸術の課題を扱う講演やワークショップも並行して行われました。

会期を終えたビジュアル・アーツ委員会は、17,000人以上が13の会場を訪れたと発表しました。イベントを率いたアートウィーク・リヤド・イニシアチブの責任者、アドワ・ビント・ヤズィード王女は「機関と実践者、そしてコミュニティが一体となって活気ある文化の未来を形作るとき、何を達成できるかを、この一週間は反映していました」と述べています。商業目的を掲げない非営利の場として立ち上げられた初回が、これだけの人数を動かしました。

ミスク・アート・ウィークが積み上げてきたもの

アートウィーク・リヤドが初開催を飾る前から、リヤドには土壌を耕してきたイベントがありました。ミスク・アート・ウィークです。2024年12月に開かれたのは、すでに8回目を数える回でした。今年のテーマはアートとテクノロジー。デジタルとメディアがアーティストの創造性をどう広げ、あるいはどう縛るのかを考えさせる企画が並びました。

会場の入り口を飾ったのは、カナダのアートスタジオ、イレギュラーによる「As Water Falls」という作品です。自然の絶え間ない変化に着想を得たデジタルの滝で、少なくとも100年間は同じパターンを繰り返さずに進化するよう設計されています。屋外スペースでは、生成AIを使って来場者をパラレルワールドの探索に誘う「Alternative Realities」も展示されました。アートフェアのスペースは今年さらに広がり、Hewar Art、Mono、Hafez、WRD Art、ATHR、Dawiなど、サウジアラビアを拠点とする11のギャラリーが作品を並べています。

ミスク・アート・インスティテュートでマーケティングとコミュニケーションを統括するイブラヘム・アル・スハイバニ氏は「アートとデザインの市場でキャリアを確立しつつあるアーティストたちがいます」と語りました。「私たちは、エスタブリッシュメントのギャラリーと成熟したギャラリーの橋渡しをし、その間にいるアーティストをあらゆるバリューチェーンを通してサポートしているのです」。教育プログラムと指導セッションを重ねてきたこの積み重ねが、新しい世代のアーティストとコレクターを同時に育てる土台になっています。

AI Generated Image of a macro close-up of a traditional geometric mashrabiya screen with warm midday sunlight casting sharp shadow patterns across a pale stone wall

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サザビーズが刻んだ210万ドルという数字

アートウィークやミスク・アート・ウィークが会場に人を集める一方で、取引の現場でも動きがあります。2026年1月、リヤドのディルイーヤで開かれたサザビーズ2回目のオークション「Origins II」で、サウジアラビアのアーティスト、サフィーヤ・ビンザグルの絵画「Coffee Shop in Madina Road」が210万ドルで落札されました。サウジアラビアの美術品にとって世界的な節目となる価格です。初回の「Origins」オークションは2025年2月でした。1年に満たない間隔で2回のセールを重ねたこと自体、サザビーズがこの市場に賭けている本気度を映しています。

この価格には前段階の予想がありました。サウジアラビアを拠点とするアートと資産のアドバイザリー会社、Qantara Studioは事前に、オークション全体の落札総額を1550万から2020万ドルと予測していました。実際の総額は1950万ドル前後で、予測レンジの上限に近い結果でした。Qantara Studioはこの結果について、公開情報の乏しい新興市場でも一定の精度で予測できたことを示す事例と位置づけています。

サザビーズで現代美術を担当し、Originsセールを率いるアシュカン・バゲスタニ氏は「サウジアラビアのアーティストに対する国際的な意欲は高まっています」と話します。Origins IIで落札された作品のうち3分の1は地元のバイヤーによるものでした。「コレクターは、強い文化的物語を持つアーティストを積極的に求めており、サウジアラビアの声は、その需要に非常によく合致している」とバゲスタニ氏は言います。王国のアートシーンが国内市場を超えた到達点に達しつつある根拠として、バゲスタニ氏はサウジのアーティストの作品を扱う国際的なオークションハウスの関心の高さを挙げています。

AI Generated Image of a quiet Riyadh boulevard at night lined with illuminated art gallery storefronts glowing amber against a deep black sky

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ビジョン2030が文化に振り向ける金額

サウジアラビアが経済のあり方を作り直す計画、ビジョン2030は、2030年までにGDPの約3%、金額にして1,800億SR、480億ドルを文化が占めることを目標に掲げています。2023年の実績はすでに600億SRに達しており、これは2018年以前の水準の2倍です。石油に頼ってきた経済の中で、文化とアートが独立した柱として数字を積み上げています。

この数字を後押ししているのが、リヤド・アートやミスク・アートといった政府機関です。ジェッダ・イスラミック・アート・ビエンナーレやディルイーヤ・コンテンポラリー・アート・ビエンナーレといったフェスティバル、アル・ウラーで開かれたデザートXのような国際展も、王国の芸術の空間を広げてきました。オークションハウスが記録する落札額と、政府が主催するビエンナーレや展覧会は、別々の動きに見えて同じ土台の上に立っています。

サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートで書かれた修士論文は、サウジのアート市場を経済の多角化を進める動きの一部としてだけでなく、社会の変化を映す鏡としても分析しました。政策立案者やギャラリーのオーナー、コレクター、アーティストへの取材を重ねたこの研究は、サウジの市場を他の湾岸諸国や西側の主要市場と比べ、独自の戦略と成果があると指摘しています。石油からキャンバスへ。この言葉が指すのは資金の付け替えだけではなく、国のアイデンティティの語り直しでもあります。

AI Generated Image of a monumental contemporary art museum facade in Riyadh glowing with warm amber floodlights at blue hour, its reflection doubled in a still pool as the indigo sky fades to a faint amber horizon glow

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湾岸地域で強まる協調と競争

リヤドだけがこの動きを見せているわけではありません。中東研究所は、湾岸地域全体でアートシーンが活気づき、各国の間で協力と競争の両方を引き起こしていると報じています。一つの都市が単独でオークションハウスやビエンナーレを誘致する段階から、湾岸全体でアートの拠点としての地位を奪い合う段階に移りつつあることが、この報告のタイトルからもうかがえます。

ドバイやアブダビがすでに築いてきたアートフェアやオークションの実績に対し、リヤドは政府主導のイベントとオークションハウスの誘致という2つの経路から追い上げています。サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートの研究は、サウジの市場を他の湾岸諸国や欧米の市場と比較する視点を採用しました。同じ湾岸の産油国でありながら、サウジは公共部門の主導が際立つ点で独自の道を歩んでいます。ミスク・アートやリヤド・アートという政府機関が展覧会やアートウィークを主催し、そこに国際的なオークションハウスが加わる組み合わせは、ドバイのように民間ギャラリーとアートフェア運営会社が先に市場を作った経路とは違います。

競争は落札額や来場者数だけにとどまりません。どの都市がアーティストとコレクターの双方にとって魅力的な拠点になるか、という長期の争いでもあります。リヤドが打ち出す非商業のアートウィークという形式は、商業性の強いアートフェアが主流の湾岸地域で、あえて違う立ち位置を選んだ結果とも読めます。政府が非営利の場を用意し、その隣でサザビーズが商業的なオークションを開く。この二重構造がリヤド独自のやり方です。

新興コレクターはどこで生まれているか

Origins IIで落札された作品の3分の1が地元バイヤーだったという事実は、リヤドに新しいコレクター層が育っている証です。オークション会場に足を運ぶ層と、アートウィーク・リヤドやミスク・アート・ウィークに集まる層は、重なりながら広がっています。JAX地区で開かれた「コレクション・イン・ダイアローグ」が、主要な文化機関だけでなく個人コレクターとの共同企画だったことも、この層の広がりを裏づけます。

Qantara Studioのようなアートと資産のアドバイザリー会社が生まれたこと自体、コレクターの需要が単純な購入から、価格の予測や資産としての助言を求める段階へ進んだ証拠です。Qantaraが見積もった105万から135万ドルという幅と、実際の210万ドルという結果の差は、モデルが想定した以上の買い手がその場にいたことを意味します。

ミスク・アート・インスティテュートが掲げる「エスタブリッシュメントのギャラリーと成熟したギャラリーの橋渡し」という役割も、この文脈で意味を持ちます。11のギャラリーがミスク・アート・ウィークに集まり、45以上のギャラリーがアートウィーク・リヤドに集まる。この規模の違いは、リヤドの中に複数の受け皿が並行して育っていることを示します。ギャラリーとオークションハウス、そして政府機関という3つの入り口が同時に機能し始めたことが、新興コレクターという層をこれまでにない速さで押し上げています。

AI Generated Image of a telephoto-compressed row of glass and steel gallery and auction house towers in Riyadh's financial district, their mirrored facades reflecting a warped double image of each other under a storm-clearing sky with shafts of silver light

AI Generated Image of a telephoto-compressed row of glass and steel gallery and auction house towers in Riyadh’s financial district, their mirrored facades reflecting a warped double image of each other under a storm-clearing sky with shafts of silver light

アートウィーク・リヤドの17,000人という来場者数、サザビーズが記録した210万ドルという落札額、ビジョン2030が掲げる480億ドルという文化の目標。この3つの数字は別の場所で生まれていながら、同じ流れの中にあります。ミスク・アート・ウィークが8回かけて育てた土壌の上に、アートウィーク・リヤドという新しい非商業の場が芽を出しました。その周辺でオークションハウスが記録を更新しています。地元バイヤーがオークションの落札の3分の1を占め、個人コレクターが文化機関と並んで展覧会を共同企画する。この動きが来年以降どこまで広がるか。リヤドに足を運ぶ人の数と、次のオークションの落札額が、その答えを持っています。

参考資料・データ出典

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